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この記事は悠里・大宇宙界隈 Advent Calendar 2017の8日目の記事です。

22. 時制と相

22-1. 現在連体形

21.1のおかげで「子供のような絵」をlegha nána ghátuḍi hína cajakáとかghátuḍi hína cajaká leghaとか言えるようになった。…ん、待てよ、あれ、終止詞って直後の名詞を修飾できるんだろうか?過去連体形(過去分詞)と未来連体形(未来分詞)があるのに現在連体形が無いはずはない。

候補としては、

  1. 不定詞+属格語尾+名詞
  2. 不定詞+名詞
  3. 終止詞+名詞
  4. 終止詞+属格語尾+名詞

個人的には、4は微妙な気がするがそれ以外はどれもそれなりにありだとは思う。と思って提案したところ、

fafs「過去連体形で表すんじゃないの」
j.v「ふむふむ、韓国語の形容詞みたいな感じか。なら過去完了連体形大過去連体形が欲しいなぁ」
j.v「完了表現はコピュラだけど、hemは無変化だから代わりにbhápúḷでも使うか?」
j.v「動詞過去分詞+bhápúḷ過去分詞」
fafs「長いな」
j.v「語尾が被って冗長だなぁ。動-(a)bháp-adínaという風にするか?」
fafs「辞なら弱化するかも?」
j.v「まあ-bh-は通るし大丈夫でしょ」

ということで、過去分詞による修飾は「動作性の過去」および「状態性の現在」を表す、という仕様にしてみる。まあ韓国語の用言と同様のシステムだな。「ámaom cákíkamúná síbha あなたの出身国」は(ただしsíbhaは文脈上cákíkúḷのoṣaであることを前提とする)B-oṣa cákíkúḷを「〜から来る」という動作だと解釈すれば「ここに来るという動作を過去に発生させたが、あなたにとってのその基点である故郷」ということになるし、B-oṣa cákíkúḷを「Bの出身である」という状態と解釈すれば「あなたにとって、現在やその周辺において『出身である』という性質を持つ場所である故郷」となる。いずれにしても表現の指すところは変わらない。

また、「状態性の過去」(かつての状態)と「動作性の大過去」(詳しい定義については後で考えることにするが、上記の「来る」と「出身地である」の議論を過去の状態について適用した感じ)は動詞と過去分詞語尾の間に-(a)bháp-を挿入して作るということになる。上では失念しているが、バートで大過去と過去完了が別物かどうかという話もある。

とりあえず、「子供のような絵」はlegha nána ghátuḍi hína cajakáとかghátuḍi hína cajakátá leghaとか言うことになる。

22-2. 進行形

進行形が欲しい。

考えたが、不定詞+hemúḷぐらいしか思いつかない。まあそれでいいか。問題は「動作性の現在を表す連体形」をどうするか、だが、hemúḷは明らかに状態を表す動詞なので、hemúḷ自体の過去分詞をとればよい。(ここら辺は韓国語と違うのだなぁ)

今までの例文との整合性も考えると、進行形を使うことは義務ではない、とすべきだろう。ただし、分詞による修飾をやるときには不可欠ということでもある。

要するに、こんな感じである。accúḷ(動作「AはBを書く」;状態「AはBを書いたことのある者である」)を例に取るなら、

基本:

過去分詞「過去の動作」及び「現在の状態」を表す。動作は「Aは(動作)をしたことのある者である」という状態とみなすことができる。
終止詞文末にのみ使用でき、現在起きている動作・習慣的動作などを表す。(現在進行形などもカバーできる)
不定詞「〜するという事象」を表す。hemúḷ「〜がある」を伴うと「〜している、という状態」を表す。
未来分詞「未来の動作」及び「未来の状態」を表す。

動作動詞の文末表現:

過去分詞ápa aghauṭadhel accadína私は過去に本を書いた;私は本を書いた(書き終えたとは言っていない)ことのある者である
過去分詞+hemápa aghauṭadhel accadína hem私は過去に本を書き終わった;私は本を書き終えたことのある者である
語幹-(a)bháp-過去分詞語尾ápa aghauṭadhel accabhápadína私は、とある過去の時点で既に本を書いたことがあった
不定詞+hemúḷの過去分詞ápa aghauṭadhel accúḷ hemadína「私は本を書いている」という状態が現在起きている=私は本を書いている(「不定詞+hemúḷの終止詞」と同じ)
終止詞ápa aghauṭadhel accadhí私は本を書く
不定詞+hemúḷの終止詞ápa aghauṭadhel accúḷ hemadhí私は本を書いている
未来分詞ápa aghauṭadhel accadíha私は本を未来に書くだろう;私は将来本を書いた(書き終えたとは言っていない)ことのある者であるだろう
未来分詞+hemápa aghauṭadhel accadíha hem私は本を未来に書き終えているだろう;私は将来、本を書き終えたことのある者であるだろう
語幹-(a)bháp-未来分詞語尾ápa aghauṭadhel accadíha hem私は未来において、「かつて本を書いたことがあった」という状態になるだろう
(不定詞+hemúḷの未来分詞)ápa aghauṭadhel accúḷ hemadíha「私は本を書いている」という状態が未来で起きるだろう(未来分詞単体とほぼ等価)

連体修飾のときには青背景になっている形しか使えないので、「不定詞+hemúḷの終止詞」の補充形として「不定詞+hemúḷの過去分詞」が用いられる。大過去と過去の完了相は別物なので分離した。

状態の動詞の場合は、体系立てて考えるなら一旦動作に引き戻すことになりそうだ。例えば、"ṣiṇṇa, legha jó cepatepa aghauṭaḍi hína ám hemakátá hem."の場合は、「絵と会話の欠如」という状態を発生させた原因の動作であるのは本の印刷・出版であり、それが過去に完了している、というのが体系的理解だろう。もちろん、普通はそんなに深く考えず「ない/なかった」ぐらいの解釈で十分ではあろうが。

22-3. 問題発生

状態の現在と動作の過去を区別しないで書くということだが、時の副詞を置いた時はどちらを取るんだろう。

バートの文法用語の建前上、韓国語でいう動詞と韓国語でいう形容詞に区別がないので、「進行形にできるかできないか」「動作とみなした時瞬間的か」で指す位置がズレるって仕様になるのかなぁ。英辞書とかに見る「進行不可」ってやつだな。

「書く」と「知っている;気づいている」で考えるか。前者が通常動作;後者が瞬間動作とそれに後続する状態。

22-4. まとまってきた

などと、図にまとめていたら整理できた。しかも既存の解説・既存の文との整合性も取れた。すまないが上記の表のことは全て忘れていただこう。

あと、大過去は-bháp-というより「終」の方がいいかも?まあ-bháp-でもいいんだが。


んー、ただ、体系に合うからといってhemúḷが「〜している」と「〜し始める」の両方を表すのはちょっとアレだな。「気づいている」と「気づく」が同じ単語なのは普通に納得がいくけど。

まあ、普通に「〜することが始まる」という風に動詞を分けるのが良かろう。さて造語の時間だ。

22-5. 造語

パイグでhut2、アイル語情報は…手元にはないな。辞書を倉庫からダウンロードしてきて確認したところh^ut^eeっぽさある。たまに見るこの^って何なんだろう。

hとsとtの後にしか来てないな、エスペラントのĥŝみたいなもんか?

@sashimiwiki @s_y15 アイル語のh^, s^, t^ってどんな音を表すんだろう

— .sozysozbot.@hsjoihs@jekto.vatimeliju (@sosoBOTpi) 2017年12月7日

分離符で、二重子音であることを示す…だったっけ?

— S.Y@タカン系パイグ系日本人 (@S_Y15) 2017年12月7日

xeh^eu「夏の」vs. xeheu「聴く」とかありますが

— .sozysozbot.@hsjoihs@jekto.vatimeliju (@sosoBOTpi) 2017年12月7日

うーむ分からん。

祖語辞書引いてもh^どころか^の入っているアイル語単語が無いな。じゃあ比較的何やっても良さそうではある。h絡みの前例はこんな感じ。

ラネーメ祖語パイグ語アイル語バート語
fuepqhuep2hep'iaiepa
riyahia1hiyaha, heyáúḷ
furoohuo2huroohorabát, horúḷ, úro

hまたは脱落、と言った感じですかね。

kh, x, zと同音か^が付かない形と同音だと思う。

— Fafs/தமிழ் மாணவன் (@sashimiwiki) 2017年12月8日

なるほどなぁ

— .sozysozbot.@hsjoihs@jekto.vatimeliju (@sosoBOTpi) 2017年12月8日

と言われた。まあkhならますますhでしょ。

ということで先頭の子音はhで良さそうで、su, sujúḷから見るに母音もuでOK。問題はt^だな。

zと同音ということはバートでzになっている可能性がある。とはいえ、バートzはアイルcまたはchというのが前例だからなぁ。まあ普通にtがらみでいいかなぁ

よし、そり舌のṭにしよう。huṭeúḷ「〜が始まる」。

22-6. 造語2

ついでに、例として使いたいし、瞬間動詞「気づく」;状態動詞「気づいている」「知っている」を作るか。まあcan2を使いたいわけですが。

アイルの同根はcanai「認識」か?まあなんかアイル語辞書を「気づく」で検索かけると14件ぐらいヒットするというアレがあるが。まあcanaiでいいか。さて造語。

ということで、cánajúḷ「気づく;気づいている、知っている」ですな。

22-7. まとめ

さて、これでやっとこの表が貼れる。

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