パイグ語などの進捗を振り返る

以下は、主に jekto.vatimeliju の手によるパイグ語進捗振り返りログである。前スレは siar_prek.html である。

2022年後半~2023年前半にわたって、パイグ語などにまつわる進捗をここの HTML として一般公開する手間をサボっていた。

ということで、それをしっかり振り返るための場所がこの praige-zerp.html である。

praige-zerp.html は「1.」「2.」など順番に更新していくのが基本方針であったが、振り返るべきことが増えてきた今や、時系列で整理することなど半分あきらめ、とりあえず反映すべきものを見つけ次第どんどんさらっていって書いていくことを目標とする。

129. キリがいいので次スレに移します

現在 2023 年 11 月 4 日。ところで、paige.dict.yaml の最終更新が2022 年9月3日なので、一年以上まともなメンテをしていなかったことになる。

この 1 年の間、燐字やパイグ語に関しては結構な進捗があったが、それを全然まとめ上げてこなかったということになる。

ということで、そのための大・振り返り作業が必要になる。さて、いまちょうど 128. まで書いてキリがよいので、某匿名掲示板よろしく、一旦別の HTML ファイルに切ってから作業を行おうと思う。

130. 【其山之書】に【巻】を登録

こういう言及もしたので、ちゃんと【其山之書】にも漏らさず掲載する必要がある。

これは 6 年ぐらい運用してたら



t͡s と t͡ɕ、直後の /i/ の有無で相補分布する同一音素だと思っていたら、いつの間にか

ze1『それ』[t͡ɕé̞ː]
zie1『広い』[t͡ɕi̯é̞ː]
ze2『巻く』[t͡sə̀ː]

の三対立が生まれており /t͡s/ と /t͡ɕ/ を別音素とするしかない



となったパイグ語 pic.twitter.com/ETo2wGttZb

— hsjoihs (はすじょい) @ 言語が好き (@sosoBOTpi) October 28, 2023

ついでに、発音表記とかに関してちょこっとミスを修正。

131. 【顔】san1

2023年9月19日の午前4時ごろ、以下のような話がされた。

れもん「あー iam1 そもそももう口の意味であまり使わないのか」
SY「現代パイグ語だともはや『顔の口』って言いそうだなぁ」
hsjoihs「四音節制約があるので、『口を開けてください』は【心開下口】でできるが、ここに【真】とかが加わると【心真開下顔口】にする必要が出るのではなかろうか」
SY「【真心】の語順の方が言いそうだが、作用域が違うから差が出るのかなぁ。『真剣に口を開けてください』vs. 『口を開けてほしいと私は真剣に思っています』」 
hsjoihs「じゃあ【心常開下顔口】の方が差が明確化できて例文として上手いかな」 
hsjoihs「ところで【顔】は転写を予約していて造字済みですらあるので、あとは音さえ作れば立てることができますよ」
SY「最近乱択が多かったので、たまには同根語で作りますか」

hsjoihs「そういや『頭』って通言語的に名称が変わりやすいらしいですね」
https://twitter.com/Mitchara/status/967026410081615873
> @asaokitan ロマンス語でもそうですが、頭は身体部位の中で性器と並んで名称が変わりやすいんですよね。なぜかはわかりませんが、たしかSihlerの歴史言語学の教科書にそんな指摘がありました。
> 2018/02/23 22:20

hsjoihs「sania.ar『顔』と sanuka.ar『姿』の間に関係を見ていく手があるかもしれん」
SY「ほかに san- で始まるのどういうのがあります?」
hsjoihs「sanati『黒肌』、sanusu『オレンジ肌』というエントリーがある。こいつらを無批判に採用するかはともかくとして、san- からなる肌方面の複合語がある可能性はある」
SY「son1【前】と関係したりしません?」
hsjoihs「ありそう~」
SY「*saunu 方面を仮定するといけそう」
hsjoihs「いずれにせよ san(0|1|2) か?」
SY「まあそれを取るのならそうかも。son1 と結びつけるなら原義側が『顔』かな」
SY「鼻音韻尾だし 0 にはなりにくそう。son1 との同根性を見たいなら 1 声かなぁ」
hsjoihs「古牌が反り舌ではないと言っているので、san1 で行きますか」
SY「【顔】、どこまで指せるんですかね。困りそうですね」

ということで、【顔】に san1 という字音がついた。これに対し、meloviliju は「san- + pogo > sabogo 顔色とかできるかも?」と同日の昼に提案した。

さて、これを正式に登録する作業がずっと先送りにされていた。2023年11月3日に行われた「同志社語学同好会アジト パイグ語」

 パイグ語には、「1 フレーズを 4 音節で言いたい」という強めの制約があり、これによって様々な興味深い現象がトリガーされる。
 たとえば、現代パイグ語では、【口】(iam1) という語は「食べる・飲む」という語義で使うのが第一義であり、「くち」を表す最も普通の表現は【顔口】(san1 iam1) である。しかし、『口を開けてください』という表現は、「開ける」【開】(nam2) と「~してください」【心】+V+【下】(hia1 V ut2) を用いて四音節で【心開下口】としたいがゆえに、【口】単体で「くち」を表現するのが違和感ない。
 しかし、【常】(ket) を加えて【心常開下】「~を常に開けてください」とした場合は、これで既に 4 音節フレーズを構成できているため、その目的語「くち」を表すのは【顔口】を用いて【心常開下顔口】と言うのが適切である。

として【顔口】という語が明示的に紹介されたので、2023年11月4日現在、jekto.vatimeliju はついにその登録作業をやっていくこととした。

132. 【斥】cuat

運用実績のある以下の 3 語を辞書登録。

133. 【乾】puau1

2024年5月6日、アイル語を整理していたmelovilijuがaipwau「乾いている」を見て「これはパイグでpuau1/puau2になるのではないか」と提案し、「2声よりは1声の方がしっくりくる」としてpuau1に決まった。

経緯は lin-marn2.html の方に詳述しておいた。

134. 【橘】hua2

ales laelija stedelafの加入に際し、パイグ語名が付与されることとなり、その際【橘】が立った。

経緯は lin-marn2.html の方に詳述しておいた。